部分点を稼ぎ、減点されにくい数学記述式問題の答案作成のコツ
2024年07月15日目次
数学の記述式問題の採点基準が明確でないことへの受験生の不安
- どこまで詳細に記述したらよいのか
- どれくらい部分点がもらえるものなのか
- 文科省が定めた高校学習指導要領外の知識を記述すると減点されるのか
などが多くの受験生が気になる点で、採点基準が気になって、勉強に身がはいらないという受験生もいます。
予算が莫大に投入されている共通テストであっても採点基準が問題となり記述式の導入を見送った
また、大学入試改革の一環として、2020年度入試から実施されている大学入学共通テストでは、自らの力で考えをまとめたり,相手が理解できるよう根拠に基づいて論述する等の思考力・判断力・表現力を評価するため,国語,数学において記述式問題を導入する予定でした。下記の理由から導入が見送られました。
記述式問題導入を見送った理由
採点の体制や精度,自己採点と採点結果との不一致の問題について,受験生の不安を払拭し,安心して受験できる体制を早急に整えることは困難であると判断(引用;文部科学白書)
記述式問題の採点基準に不安を感じる理由
これから詳しく解説していきますが、採点基準は大学や採点者により微妙に異なり、絶対的なことが言えないということです。そのため、採点基準について断言する専門家も少なく、受験生や保護者は不安を抱えがちです。それでも、指針がなければ勉強の方向性も定まりません。そこで、今回の記事ではいくつかの大学の採点基準を解説していきます。
記述式問題の指導は誰にしてもらえばよいか?
さきほど、受験した大学により記述式問題の採点基準が異なると言及しましたが、採点基準が志望校により異なるのであれば、受験生は記述式問題をどこで学び、誰に指導してもらうべきでしょうか?
すでに記述式問題を長年個別試験で出題してきた多くの国立大学では、入試が終わると必ずその年度の採点基準がどうだったか会議が実施されます。また、その結果を踏まえ、毎年、採点基準や出題傾向が変更されます。つまり、長年該当の学校の受験指導をしてきた塾や講師は、どのような回答を作る受験生が合格してきたか知っています。記述式問題の指導は、必ず指導実績のある塾、講師にお願いしましょう。また、記述式問題の指導は模範解答の説明をすることではなく、受験生が作成した回答の添削をすることが重要です。模範回答をいくら暗記しても得点はあがりません。そのため、集団授業ではなく、個別指導で教えてもらった方がいいでしょう。
これは、中学受験の国語の指導も同様です。志望校の指導経験がある実績のある講師に個別指導で解答を添削してもらうべきです。名古屋講師会本山教室の個別指導では、東海3県の国公立大学の個別試験や難関私立大学の記述式問題を中心に、指導実績が数多くあります。記述式問題に不安があるかたは、お気軽にご相談ください。
また、中学受験の国語の記述問題の指導も行っておりますが、みなさん、受験直前に駆け込んでくる傾向にあります。受験直前期に小論文、国語、記述式問題の指導を担当する講師の枠はほぼうまっています。余裕をもってご相談ください。
大学の採点基準が決まるながれ
①入試問題と同時に解答例を作成する
②採点基準をきめる
③採点は教員が行う(採点基準を決めた教授ではなく、助教や准教授などが実際は行うケースが多い)
上記のような流れで採点基準が決まります。採点基準は年々、少しずつ変わっていきます。前年度の入試結果をふまえ、入試問題を作成することが多いため、大幅な変更が実施されることはあまりありません。大幅な変更がある場合、早稲田大学のように大学の公式サイトで試作問題が掲載される場合がおおいでしょう。
模試の採点は実際の入試の採点基準の参考にはあまりならない
予備校の模試の採点はアルバイトの大学生や大学院生が行っています。模試実施直後に短い期間、働いてもらうだけのアルバイトの採点者が何万人といるのです。当然、満足な教育はされていません。そのため、ここまであってたら、何点、ここまであっていたら何点というように、至極適当な採点基準です。また、細かいその他の採点基準もバラバラです。
数学の記述式問題の採点は、模試の採点結果よりも実績ある講師の指導の方があてになります。回答は必ず講師に目を通してもらい、良い点と悪い点を指摘してもらうことで、ぐっと合格に近づきます。
部分点をもらいやすく、減点されにくい記述式問題の答案の書き方【数学】
① 採点者をイライラさせない、読んでもらうことを意識した読みやすい答案
- 0か6かわからない数字ない
- qか9か読めない文字
- グラフの軸がぐにゃぐにゃしていたり、斜めだったりする
- 消し残しがあり、読みにくい
- 図やグラフの中の文字がつぶれていて読めない
- 字下げに統一感がなく、表記が読みにくい
こういう答案は要注意です。採点者は短期間に大量の採点をしなくてはいけません。また、大学の教員であるため、通常業務もあります。うえのどれかに当てはまる答案を作っていると、採点者をイラつかせてしまいます。。
採点者をいらつかせてしまうと、「この受験生やっぱりわかっていないな」と減点されやすくなります。だからこそ、採点者に読んでもらうことを意識した、きれいな答案作成を目指しましょう。
② 採点者に理解していることをアピールし、採点をスムーズにしてもらうために、式だけでなく、日本語の説明も書く
答案に途中式が書いてあるのだから、問題ない!と考える受験生もいるかもしれません。が、それは間違いです。「どのような過程でこの式をつかったか?」がわかりやすい答案は部分点をもらいやすく、減点されにくい答案です。
論理的にきちんと理解していることをアピールできるためです。また、「どの定理を使ったのか、どのような過程で使ったのか」を書いておくと、理解していることを採点者にアピールするだけでなく、採点者が受験生の意図を理解すやすく、採点がスムーズに進みます。よって、採点者をイライラさせずにすむのです。具体的には次のような表記です
- 問題文に与えられた式より、
- 式①と式②の差をとって、
- ~の余事象から、
- 三角形~に関する加法定理より、
- 図Bより、
③ 実験結果を残しておく。
解法が思いつかなくても、実験結果を残しておくと部分点をもらえることがあります。例えば、「漸化式の計算問題」もしくは「漸化式の証明問題」で、n=1, 2, 3を計算して実験した結果を解答用紙の端に残しておくだけで、1~2点ほど部分点をもらえることがあります。合否の当落線上にいるときは、とても貴重な1点ですね!だからこそ、方向性を決定するために行う試しの計算は、問題用紙でなく解答用紙の端で行いましょう。
また、このような代入をして実験をしていると、解法が見つかることがあります。そのためにも、実験結果を書いてみることは大切です。いくつかの解放で迷った場合、並列して表記しておく。どちらかが正解であれば部分点をもらえる可能性もあります。
④ 計算用紙でなく、解答用紙にグラフや図を書く。
グラフや図をかいておくだけでも、部分点を1~2点ほどもらえることがあります。だからこそ、図やグラフは下書きを計算用紙にするのでなく、解答用紙にきれいにかきましょう。【例;y = (被積分関数)のグラフを描く、不等式の両辺のグラフを描く】また、コツは最初は大きめにかくことです。あとから追加でいろいろと書き足していくことがあるため、最初から大きめにかいておいたほうがいいでしょう。ごちゃごちゃして読めない図やグラフでは部分点はもらいにくいためです。
⑤ 時間切れで計算しきれないときの部分点のもらいかた
時間切れで計算しきれないと思ったら、回答までの流れを日本語で説明しておく。数値が間違っていても、回答を得るまでの過程が正しい場合、部分点をもらえる可能性があります。
⑥ 証明問題の結果を利用する場合の部分点の稼ぎ方
大問中の問①が証明問題、問②が問①の結果を利用する場合、証明ができていなくても、問①の結果を用いて問②を記述して部分点を稼ぐ。
⑦ 文科省の学習指導要領の範囲外の知識でも正しく使える場合、問題ない
大学入試の数学の採点を行う教員は数学のプロです。よって、高校の指導要領の知識を使っているかではなく、数学的に正しく理解しているかどうかを重視します。また、そもそも、採点をしているのは大学の教員ですから、何が高校の指導要領の知識かわかっていません。だから、学習指導要領外の知識であっても正しくつかえていれば問題ありません。
ただ、大学入試懇談会報告(各大学が前年度入試の結果を公表している会議)では、「学習指導要領外の知識を使用している受験生は誤って使用している受験生が多い。」とのコメントがあったようです。間違って使うことになるのであれば、無理して使わないように。自信のある理論を使うようにしましょう。
⑧ 証明問題は全部証明できなくても、証明できるところまで書く。
例えば、必要十分条件を証明する必要があっても、どちらか一方だけでも証明できれば部分点をもらえます。
大学入試懇談会での各大学が発表した入試作成基準や採点基準
日本数学教育学会と東京都高等学校数学教育研究会は毎年、大学入試懇談会を開いている。この会議の資料が流出したことが以前問題になったため、具体的な資料を公表することは禁止されていますが、参加した教員の方からお話を聞くことができました。
この会議で今まで発表されてきた、各大学の採点基準を理解するのに役立つ話を下記に紹介します。参加大学は東京大学、京都大学、東京工業大学、東北大学、慶応大学、早稲田大学、東京理科大学、学習院大学という所謂、最難関国公私立大学でした。
問題の作成意図に関する発言
- 計算力・数学的センス・工夫する力の有無を判断できる問題をバランスよく出題するように配慮している
- 良い問題は、有名でも過去に出題されていても入試問題として採用している。
- 数学で差が出る問題作りを心掛け、数学が苦手な受験生を合格させないようにしている。
- 問題に図を表示せず、受験生が問題から読み取る能力を試したい。
- 簡単な計算問題を必ず出題することで、ミスが少ないかを確認している。
採点基準に関する発言
- 計算した値があっていても、説明が不足しているものはかなりの減点としている
- 字がつぶれている、うすいなどで読みにくいものはいくら注意しても採点で見間違うことがある。読めない=書いていないと判断している。
- 論証は、日本語できちんとした説明をつけてほしい。式だけ書いていても、論証重視の問題ではほとんど点を与えていない。
- A=Bという表示は、A=Bを代入したのか、A=Bが導かれたのか、A=Bと過程したのか判断できない。日本語の説明がないものは減点対象または殆ど点を与えていない。
- 最終的な答えを導き出せていなくても、途中の推論が正しければ部分点を与えている。
- 論理的記述力をみる問題では、答えだけ書いてもかなり減点している。
- 合同式はいきなり使わずに、定義を書いてから使用してほしい。
- 難問は解ければ加点、簡単な問題はどのように解答するかで加点される得点がことなる。
- 思考力を問うような問題だけでなく、パターン問題も出題し、学力を確認している。
- 通常の学習をした結果、高校生が理解できるような問題であるならば学習指導要領外の内容も出題している。
- 採点では、説明が不足していないか、解答作成者がきちんと理解しているかを確認している。丁寧に減点をしている。
- 採点基準は学部により異なる
- 穴埋め問題は採点時間に制約があるために出題している。計算の過程は見ていない。
- 正しい方向性で解答している答案に大きく点を与えている。
まとめ
今回は、部分点をもらいやすく減点されにくい数学の記述式問題の答案作成方法について紹介しました。どの大学にでもあてはまるであろう基準や、各大学によって細かい基準がことなることが理解してもらえたかと思う。繰り返しになるが、記述式問題の答案作成は、模範解答を読み込むことではなく、答案を添削してもらうことで力がつく。正しい学習法で、ぜひ、合格に近づいてほしいと思います!
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この記事の監修
名古屋講師会 教務部長浅木真理
大学受験指導歴19年、名古屋講師会創業時より医学部受験、難関大学受験のカリキュラム作成を担当。
数多くの生徒を難関大、医学部に合格させてきた講師会で、学習支援をしてきた受験生とその保護者は1000人超。