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医学部入試の面接試験について②

2024年03月29日

前回の記事では、医学部入試に面接がある理由、面接で見られているポイント、面接で落ちる人の特徴、面接で落ちる人の割合についてお話しました。今回の記事では、実際の医学部の面接でよく聞かれる質問とその回答のポイントを紹介していきたいと思います。

医学部面接でよくある質問と回答のポイント

①なぜ医師/この大学を志望しましたか?

医師になること、またその大学を志望した動機について聞く質問です。まず、受験生全員に聞かれるであろう質問と考えてください。
 医師を志望した理由ですが、基本的には嘘がない内容にしましょう。例えば、親族に医師がいるのであれば、「親戚に医師がおり、幼少期より医療職に対する漠然とした憧れがありました。高校生になり、進路を本気で考えた際、医療に関わりたいと強く考えるようになり医学部を志望しました。」といったような回答例が考えられます。当然ですが、待遇がよいから、社会的地位が高いからといった内容は好まれません。入学後の勉強や研修医での研鑽に持ちこたえられないと判断されるリスクがあります。
 最初の回答をさらに深く掘り下げて質問されることも想定しておきましょう。例えば、先ほどの「親戚に医師がおり、幼少期より医療職に対する漠然とした憧れました」という回答に対して、「なぜ、看護師や臨床検査技師でなく、医師を志望したの?」という質問がその後されることが予想されます。

 面接試験のシミュレーションを塾や予備校、学校の先生にしてもらい、回答に対してさらに質問してもらうという練習を何度か繰り返すと、自分の考えも整理されてきます。シミュレーションは必ずやりましょう。
 各大学の志望動機についても、面接官が喜ぶであろう模範回答を答えるのではなく、本当にその大学を受けたいと自分が思った理由の中から、面接で回答すると高評価を得られるであろう理由を選択し、回答しましょう。思ってもみないことを回答すると、さらに突っ込んだ質問をされたときに答えられないことがあります。
 逆に、本当に自分が思った理由であっても、「偏差値的に受かりやすいから」などは回答しないほうがよいでしょう。大学のカリキュラムや校風に関連した内容であれば、問題ないでしょう。
 回答した志望動機に対して、「その志望動機ならうちの大学じゃなくてもいいんじゃない?」と意地悪な質問をされることがあります。そういった場合に備え、その大学でないといけない理由(立地、特徴的なカリキュラムなど)を含めた回答を事前に考えておきましょう。大学の説明会やパンフレットを見ての回答になるため、受験生の回答はどうしても似た内容になります。それでも、その大学のことをきちんと調べている受験生は好印象です。

②併願校を教えてください。

 私大医学部入試の面接でよく聞かれる質問です。受験生がいくつかの私大医学部を併願していることは面接官もわかっています。併願校がないのは不自然ですから、正直に答えましょう。
 ただし、3校以上名前を出してしまうと「受かればどこでもいいのかな」と思われてしまうリスクがあります。以前、某私大医学部の教授の方が、「併願校が多すぎる受験生には良い印象を持たない」とおっしゃっていました。複数校受験している場合でも、名前を挙げるのは2校ぐらいにしておいた方が無難とされています。その中でも、その大学と偏差値がかけ離れている大学を併願校にあげると、他にもたくさん受験していると推測されてしまうため、あまり偏差値がかけ離れていない大学を併願校としてあげましょう。
 併願校の質問に関連しては、併願校の志望順位が聞かれることがあります。この時は、たとえその大学が第一志望でなくても、「御校が第一志望です」と答えるようにしましょう。このような大人のやりとりができるかで、コミュニケーション能力があるかどうか判断している大学もあります。
 また、なぜその大学が第一志望なのか、その大学の特色、そこでしか学べない分野を学びたいといったことも併せて話すと説得力が増します。必ず、志望校の学校研究はしておきましょう。

 前述の内容と重複しますが、併願校として挙げるのは偏差値的に近い大学の方がおすすめです。その大学よりも偏差値が医学部を併願している場合、その大学は滑り止めだと判断されるからです。

③高校時代の印象に残っている思い出、取り組んだことを教えてください。

 高校生の時に力を入れたこと、最も印象に残っている出来事も面接でよく聞かれます。部活をしていた受験生は、部活について答えるのが無難です。仲間と協力し、目標に向かって努力したという趣旨の回答は医師として必要なコミュニケーション能力、継続力をアピールすることができる最高の回答です。実績を残せていなかったとしても、コツコツと努力することができる、周囲と強調して努力できるというのは高評価です。医師も看護師、作業療法士、薬剤師、医局のメンバーとコミュニケーションをとり、協力して仕事をします。いずれ、自分の大学の医局に入局するメンバーとして、一緒に働きやすいメンバーであると思ってもらうためには、部活の話をするのはよいでしょう。
 部活をしていなかった場合、学校行事に関連して回答でもいいでしょう。学園祭や体育祭をテーマに、仲間と協力したという趣旨の話をするといいでしょう。ずっと勉強していた、遊び惚けていたという内容はたとえ一番の思い出だったとしても、回答にするのは避けましょう。面接でそのようなことをわざわざ回答してしまうということは、患者さんとのコミュニケーションでも問題になってしまうことをわざわざ回答してしまうかもしれないと思われるリスクがあります。

④あなたの長所と短所を教えてください。

 長所は答えやすい質問ですね。自分の長所の中から、医療現場で活かしやすいものを選択し、具体的にどのように生かしていきたいかまで回答できるとよいでしょう。例えば、コツコツと努力することが自分の長所だと認識しているのであれば、「これから医学生、医師になってからも、一生、勉強をし続けなければならないと思います。ですが、自分の長所を活かし、能力を高め続け、よりよい医師になれるよう努力することができます。」といった回答例が考えられます。

 難しいのは短所の回答です。短所を答えるとき、ポジティブに言い換えられるような短所を答えましょう。例えば、心配性であれば問題点に気づきやすい、または慎重さがあると言い換えられます。完璧主義であれば責任感がある、妥協をしない性格と言い換えることができます。
 このようなポジティブに言い換えられる短所を回答に選び、「私の短所は完璧主義が過ぎる点です。例えば、部活の練習メニューや方針に関して、妥協ができず、周囲と衝突することもありました。ですが、完璧主義であるがために責任感も強いため、周囲と衝突しても、最終的には双方が理解しあえるところまで話し合いを続けました。話し合いに時間を要しましたが、チームにとってよりよい練習メニューを決めることができました」といった感じに回答するといいでしょう。

 自分では気づいていない長所や短所もあります。友人や家族に聞いてみると、客観的に答えてくれることもあります。周囲にアドバイスをもらうのもいいでしょう。

⑤浪人、再受験について

 浪人や再受験のため、周囲の受験生よりも年齢が高い場合、それについて質問をされることがあります。学校生活に馴染めなかったり、多浪の末の合格であるがために、勉強に疲れ切っていて、合格後に学業に身が入らず、留年する学生が例年いるためです。入学後も学業を続けられること、年下の同級生と上手に付き合っていけることを伝えるようにしましょう。


浪人について聞かれた場合
 浪人した理由を聞かれた場合、「なぜ浪人してしまったか」+「浪人して得られた経験、価値観」について答えるといいでしょう。回答例の一つとして、「浪人してしまったのは現役の時の努力不足が原因だと考えています。受験に対する認識が甘く、つい毎日の勉強を怠ってしまいました。浪人し、勉強のみの毎日を送ることで自分の甘さを自覚することができた、人間として成長できたと考えていす。」などがあります。

再受験について聞かれた場合

 医学部以外の学部を卒業後、医学部を受験するに至った経緯について話すとよいでしょう。再受験生の場合、年齢的に現役生よりもかなり上です。そのため、内容のある回答が求められる傾向にあります。

 多浪生や再受験生によく聞かれる質問として、「年齢がかなり下の学生と同級生になるが、うまくやっていけそうか」という内容の質問がよくされます。この質問がされたときは、

  • 自分が年齢関係なく友達が作れること
  • 年齢が下の人と関わるのは自分にとってむしろ楽しいということ

この2点を具体的なエピソードを交えて、必ず回答に盛り込むようにしましょう。学校生活になじめず、留年するリスクの高い学生に合格はだしたくないと大学側は考えているため、この2つを必ず盛り込むことは大切です。

名古屋大学医学部地域枠の面接内容と回答のポイント

ここからは、実際の面接の内容と回答のポイントについて、名古屋大学医学部地域枠を具体例にあげて紹介していきます。

名古屋大学医学部地域枠面接の基本情報

得点・・・ 得点化なし
時間 ・・・15分前後
形式 ・・・個人面接(面接官3人)
その他特徴 ・・・志望理由書を事前に提出
以上が名古屋大学医学部地域枠の面接の基本情報です。事前に志望理由書を提出する必要があります。必ず、予備校や学校の先生のチェックを受けてから提出しましょう。

オーソドックスな質問

志望動機
高校で頑張ったこと
自身の長所や短所

地域枠という制度を理解しているか問われる質問

 名古屋大学医学部の地域枠入試では、在学中に月額15万円程度の奨学金貸与を受ける代わりに、卒業後9年間地域医療に従事することが義務付けられています。そのほか、在学中に地域医療教育学講座が担当する授業の選択が必須になるなど、様々な制限が加わります。それらを理解したうえで受験しているかは必ず問われます。必ず、受験する年度の資料を読み込んでいきましょう。

 その他、地域枠入試に関連する質問として、
「地域枠入試では診療科が制限されることを理解しているか?」
「将来不便な場所に住むことになるかもしれないが大丈夫か?」という質問がされます。
文言を見ると厳しい雰囲気の面接なのではないかと心配する受験生もいるかもしれませんが、実際に受験した先輩の体験談では、圧迫面接と感じる雰囲気ではなかったとのことです。気負わずに、地域枠入試の制度について理解して臨めば、ハードルが高い面接ではないでしょう。

筑波大学医学群の面接内容と回答のポイント

筑波大学医学部群面接の基本情報

得点・・・ 200点
時間 ・・・10~20分
形式 ・・・個人面接(面接官2人)
その他特徴 ・・・MMI形式の質問がある

面接の特徴・・・得点化とSCTテスト、MMI形式

筑波大学の面接では得点化がされます。共通テスト、2次試験の合計得点が2,300点であるのに対し、面接が200点配点されています。決して無視できない点数です。筑波大学を志望する場合、早めに面接対策を始めておきましょう。また、筑波大学では面接の他にも適性試験という形でSCTテストというものが行われています。こちらは

  • 私はよく…
  • 私の父は…

といった短文が与えられ、その分を完成させることで受験生の心理について調査する適正試験です。こちらにも300点の配点があります。事前対策は必須です。
 

MMI方式の質問

 筑波大学では、その他MMIも実施されています。毎年3問ほど出題されており、過去の内容としては、「水分の摂取を禁止されていた患者が、こっそりジュースを飲んでいるのを目撃してしまった。あなたはどのように声をかけるか」。このような出題がされています。解答例としては、「私はまず、患者さんになぜそのような行動を取ってしまったかを尋ねます。禁止されているのに水分を取ってしまうのは、ストレスなどの原因が背景にあるはずです。患者さんに水を飲ませることはできなくても、患者さんに共感して水を飲みたいというストレスを少しでも和らげる助けになることはできると思います。」となります。MMIでは解答にさらに突っ込みが入ります。そういった場合にも備えて、あやふやなことは自分の考えをしっかりと話すようにしましょう。

MMI方式とは

Multiple Mini Interviewを略し、MMI方式といいます。簡単にいうと、文字通り、「多様な/短い/面接」という意味です。各大学により、実際の面接の面接での細かいMMIの形式は異なりますが、何かしらのシチュエーションが提示され、そのシチュエーションで、受験生がどのように考えてどのように行動するかをその場で手短にプレゼンテーションする形が最も一般的です。このMMI方式を採用している大学は、面接を得点化していたり重視している大学が多い傾向にあります。

2回にわたり、医学部入試で実施される面接についてお話してきました。今回紹介した内容はあくまで回答例です。自分自身の本当の性格と特性を捉えた回答でなければ、面接で深く掘り下げられたときに上手に回答することは難しくなります。よくある面接の例文集を読んで丸暗記するのではなく、自分自身についてふりかえり、自分だったらどのように回答するか、志望校の過去の質問に対して回答を作成しておきましょう。また、当然ですが、志望校の研究は必ず行いましょう。

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この記事の監修

 名古屋講師会_浅木真里

名古屋講師会 教務部長浅木真理

大学受験指導歴19年、名古屋講師会創業時より医学部受験、難関大学受験のカリキュラム作成を担当。
数多くの生徒を難関大、医学部に合格させてきた講師会で、学習支援をしてきた受験生とその保護者は1000人超。

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