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2024年1月13・14日実施共通テストの分析②

2024年02月07日

数学ⅠAの講評

大問分野
1整数、三角比の応用
2二次関数、データの分析
3確率
4n進数
5図形の性質

 前年と比べて試験時間や形式に変更はありませんでした。平均点は51.38点で、前年が55.65点であることを考えると、前年よりは難化したといえます。

 大問1では数と式、図形と計量の分野から2題出題されました。誘導が丁寧についており、流れに乗れば解ききることはそう難しくありません。図形と計量の分野では三角比を用いて地面に立っている電柱の高さを求める問題が出題されています。共通テストではおなじみになりつつある数学を実生活へと応用させる問題ですね。こちらも誘導がついているので難易度としては高くありません。注意点としては三角比を用いて小数の細かい計算をする過程があるため、ミスをしないようにしましょう。

 大問2では座標平面上を動く点を題材として、二次関数と図形の性質を融合させた問題が出題されました。大問1に比べると誘導の数は少なめで、自分で変数を設定しなければならない箇所もあります。もう一問のデータの分析はマラソンのタイムを題材とした問題となっています。用語の理解を問うような出題やデータの解釈を求める内容となっています。内容としては典型的な部類に入りますので、早く、確実に解きたい問題です。

 大問3以降は例年通り選択問題となっており、2問を選択して解答します。大問3は箱の中のカードを取り出す際の確率の問題でした。序盤は丁寧に誘導がついており、典型的な問題なので解きやすいのですが、最終問題は比較的難しくなっています。人物の界隈がヒントになっており、前半の問題の考え方を応用する必要があります。

 大問4ではn進法に関する問題が出題されました。大学別の個別試験ではなかなか見ないテーマなので解きにくく感じる受験生も多いのではないでしょうか。それに加え、タイマーを使うという設定も問題を複雑にしています。また、問題の中では一次不定方程式や最小公倍数を利用することに受験生自身が気づかなければなりません。計算量自体はそこまで多くはないのですが内容以上に解きにくく感じるのではないでしょうか。

 大問5では星形の図形をテーマとして、線分比や他の図形との位置関係を考察する問題が出題されました。他の問題に比べるとシンプルな形式となっており、誘導も簡潔なので流れに乗ることができればそこまで難しくない出題であると思われます。

 全体としては、文量や難易度に大きな変化はなく、平均点は低下いるものの例年並みの難易度であると思われます。対策としては日頃の演習からチャート式の解法をただ丸暗記するだけでなく、式変形の意味や公式を使う理由を意識すると良いでしょう。また、今回のように選択問題で解きにくい問題、見慣れないテーマが出題されることもあるので、過去問演習ではすべての問題を解き、臨機応変に選択テーマを変えることができるようにしましょう。

数学ⅡBの講評

大問分野
1対数関数とグラフ、整式の除法
2微積分
3確率分布と統計的な推測
4数列
5空間ベクトル

 2024年の平均点は57.74点で、前年は61.48点でした。後述しますが、前年に比べてより数学的な能力が問われる設問が多いため差がつく出題となりました。

大問1は対数関数をテーマとして、式に対応したグラフや不等式の示す領域を選ぶ問題が出題されました。内容は教科書レベルなのでしっかりと得点したい問題です。

もう一つの問題は3次式と2次式が与えられ、その式の除法について考察する問題です。計算問題だけでなく、論理を穴埋めする問題が出題されています。昨年と比べて選択肢の文章が長くなっているのでやや複雑となっています。

 大問2では微分と積分の融合問題が出題されました。誘導に沿って穴埋めを行う形式で、題材自体はオーソドックスなのですが解きづらいと感じる受験生も多いと思います。文字を複数含むため、抽象的な式の処理が続きます。

 数学ⅠAと同じく大問3からは選択問題です。大問3では天候に関するデータについて標準偏差や信頼区間を計算する問題となっています。計算が複雑でミスをしやすく、与えられた条件も理解しにくくなっています。

 大問4では漸化式をテーマに、一般項を求めたり数学的帰納法の穴埋めをしたりする問題です。前半は簡単なのですが後半はあまり見ない形式の漸化式が出題されています。最終問題では真偽を判定する問題が出題されており、計算力だけでなく思考力が求められています。

 大問5は空間ベクトルです。選択問題の中では比較的解きやすい問題と思われます。誘導もついているので方針が立てやすくなっています。

 全体としては昨年と比べて計算量よりも数学的思考力、論理的思考力が求められる出題になっていました。特に大問2がその最たる例で、数学が得意かどうかで大きく差がついた大問といえるでしょう。対策方法としては共通テストの過去問以外にも、穴埋め形式の私立大入試を解くこともおすすめです。

物理の講評

大問分野
1小問集合
2力学
3波動
4電磁気

 2024年の平均点は62.97点で、前年は63.39点でした。問題形式や分量は昨年と比べてほぼ変化がなく、例年通りです。

大問1は各分野の基本問題を集めた小問集合となっています。数問ごとに分野が切り替わりますが、内容自体は簡単でクセのない出題となっています。計算ミス、マークミスにさえ気を付けていればそこまで怖くはない問題です。

 大問2は力学からの出題で、ペットボトルロケットをテーマとしてペットボトル内の水の流量や推進力を求めます。与えられる文字の量が多いほか、微小変化を扱う問題への慣れが必要ですが基礎に対する理解があれば解ける問題となっています。成績上位層とそれ以外で差がついた問題なのではないでしょうか。

 大問3は金属弦の共振に関する問題です。計算結果をそのまま答えさせる問題は少なく、グラフに関する考察問題がメインとなっています。ただし、予備知識があれば表を読み取らずとも解ける問題です。

 大問4は電磁気で、電場と電位についての問題です。こちらも先ほどと同じく図や正誤問題、穴埋め問題がメインとなっており、計算結果を答えさせる問題は最後の問題のみとなっています。見慣れない実験をテーマにした問題であり、即答することはなかなか難しいかもしれませんが知識を応用していけば確実に得点することができます。

 全体としては会話文やグラフから必要な情報を取り出し、物理的な考察を行うことが求められています。見慣れない実験をテーマとした出題もあり、基礎的な理解の徹底が重要です。普段の問題演習の時から答えの導出のみを行うのではなく、物理法則の意味を考えることが重要です。

化学の講評

大問分野
1物質の状態
2熱化学、電池、電離平衡
3無機化学
4有機化学
5質量分析

 2024年の平均点は54.77点で、前年は54.01点でした。見慣れないテーマからも出題されていましたが、全体としての難易度は前年と同じだと思われます。

大問1は理論化学分野の小問集合となっていました。どの問題もよく見るタイプの出題であり、そこまで難しくはなかったと思います。大問1は昨年と比べて問題数が2問少なくなっていることもあり、スピーディに処理したいですね。

 大問2も理論化学からの出題となっています。大問1と同じように各分野の問題は独立しており、そこまで複雑な出題はみられませんでした。問3のみ計算量が他と比べて多いので時間配分に注意する必要があります。

 大問3は無機化学からの出題となりました。問1~問3は知識問題となっており、そこまで時間はかからないと思うのですが、問4は計算や式変形が必要なので時間がかかると思います。ニッケルと銅の塩化物の酸化還元反応についての出題となっています。c問題では電気分解の陰極で2種類の反応が同時に起こるため、基礎問題よりはやや難しくなっています。

 大問4は有機化学の問題です。問1~問3は教科書レベルの知識を応用すれば解ける問題なのですが、曖昧な理解だと答えを出すことが難しくなっています。問3ではβラクタム環やp-アミノ安息香酸エチルという初見の物質をテーマとして化学反応を考察する問題となっています。構造を決定する問題なのでやや時間はかかるかもしれませんが、誘導が丁寧についているので解ききることは難しくないでしょう。

 大問5は質量分析という、あまり見ない分野からの出題でした。問3では質量スペクトルという概念が提示され、問題文や例から質量スペクトルについて理解する必要があります。知識というよりも思考力がかなり試される出題で、最後の問題ということもありかなり差がついた問題だと思われます。

 全体としては化学に関する正確な知識と、初出の概念に対する理解力が試される問題が多く出題されています。昨年と比べて問題数こそ減っているものの、かかる時間や難易度は昨年と変わらないと思います。

生物の講評

大問分野
1生命現象と物質
2生命現象と物質
生体環境
3生体環境
生殖と発生
4植物の生殖
植物の環境応答
5生態系
6生物の進化、系統

 2024年の平均点は54.83点で、前年は48.46点でした。複雑な考察問題の数が減ったため点数が伸びたのだと思われます。

大問1では最近の糖代謝に関する知識問題と考察問題が出題されました。実験をテーマとして、考察の穴埋めをするという形式はセンター試験時代からよく見るパターンですので慣れていれば特に難しくは感じないと思います。

 大問2は生体膜と膜電位についての問題です。問2以外は知識で解くことができます。求められる知識も教科書レベルなので確実に得点したいです。問2は実験をテーマとして考察を行うのですが、シンプルな実験なのでこちらも確実に得点したいですね。

 大問3は骨格筋の収縮とニワトリ胚についての問題です。問2では4つの実験結果から考察を行うのですが、実験の細かい条件を読み落とさない必要があるため焦っているとなかなか解けないかもしれません。

 大問4はジャガイモの生殖と環境応答についての問題です。問3では仮説に対して行った実験の測定項目や仮設立証のために必要な計算式を考察する問題が出題されました。表を理解するのに時間がかかるだけでなく、論理的な思考力が試されます。

 大問5では生態系において蓄積される有機物の量について考察する問題です。与えられたテーマや条件は見慣れないものですが、選択肢に紛らわしいものがないので解きやすい部類に入ると思います。

 大問6は動物の進化、系統についての問題です。問3は問題文中に示されたシミュレーションの内容をもとに個体数を考察する問題なのですが、シミュレーションが複雑でやや難しいです。問2以外は比較的簡単に解くことができます。

 全体の傾向として、昨年に比べて知識問題の数が微増しました。考察問題も一部複雑な問題はあるものの、昨年に比べると全体的に難易度は下がっています。対策方法としては教科書レベルの知識を正確に抑え、その上で全分野の考察問題の演習を積むといいでしょう。見慣れない設定の考察問題の対策として、難関大学の過去問で演習するのもおすすめです。

地学の講評

大問分野
1総合問題
2固体地球
3岩石・地史・地質
4大気と海洋
5宇宙

 2024年の平均点は56.67点で、前年は49.85点でした。基本的知識の理解が中心となっているため、前年よりは易化しています。

大問1は地学の各分野に関するグラフや図の読み取り問題でした。小問集合的な問題でいずれも難易度は低く、得点しやすい問題だと思います。

 大問2は固体地球からの出題で、図を選択させるというあまり見ない形式の出題がされました。こちらも小問集合的な問題となっており、複雑な考察などをしなくてもよいので確実に得点したいですね。

 大問3はA、B、Cの3つの問題から構成されており、A問題は鉱物と岩石に関する問題です。問3のみ考察問題で、2つの図から情報を読み取らなければなりません。B問題は化石に関する問題で、貝の化石から地層が堆積した水深の範囲を推定する問題です。こちらも表から情報をまとめる必要があります。C問題は地質図から読み取れることを選択する問題です。

 大問4のAは気圧と気温に関する実験の概念図が与えられる問題です。比較的簡単な問題で、基礎的知識があれば深い考察は必要ありません。B問題は雲の形成がテーマとなっていて、基礎的な知識があれば得点できます。C問題は黒潮に関する問題です。

 大問5のA問題は火星と木星の視運動に関する問題です。問2の惑星の視運動と公転の関係について考察する問題は見慣れない形式だったのでやや解きにくいです。B問題は恒星に関する問題で、正確な知識を前提とした考察問題が出題されました。

 全体としては知識問題の割合が昨年に比べてやや減ったものの、計算問題や複雑な条件の考察問題の数が減っています。基礎知識に不安がある人は教科書に立ち返ってみるのもおすすめです。

全体の講評、リーディング、リスニングの講評はこちらをお読みください。

数学の応用力を養う方法はこちらをお読みください。

共通テスト後に実施される二次試験についてはこちらをおよみください。

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この記事の監修

 名古屋講師会_浅木真里

名古屋講師会 教務部長浅木真理

大学受験指導歴19年、名古屋講師会創業時より医学部受験、難関大学受験のカリキュラム作成を担当。
数多くの生徒を難関大、医学部に合格させてきた講師会で、学習支援をしてきた受験生とその保護者は1000人超。

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